余呉CocoCafe設立にあたって

 

特定非営利活動法人子ども自立の郷ウォームアップスクールここから(以下当法人と呼ぶ)は、平成186月余呉町の廃校(旧丹生小学校)の木造校舎を借り受け、余呉の自然と温かで素朴な人々の心に抱かれたこの地・この校舎で、不登校児童生徒のための寄宿制の自立支援施設としての活動を始めました。

 

不登校やいじめなど、様々な諸問題を抱えて自信を失い、人間不信に陥っている子ども達を少し親元から離し、寄宿生活(四泊五日の共同生活)を行いながら、その中で、様々な体験活動(陶芸・トンボ玉・ステンドガラス・七宝・カヤック・スポーツ・サイクリング・登山・学習・日常生活等)や、地域の人とのかかわりを通して、いろいろなことを経験し、その子どもの心を癒し、元のその子らしい元気さや自信を取り戻せるように活動を続けて7年目に入ろうとしています。

 

現在に到るまでに、重い問題を抱えたり、長期の不登校に悩む子ども達約40名近くが、当法人で、寄宿・通学をして、元気に回復し、もとの学校や生活に戻ったり、高校や大学に進学したり将来に希望を持って、復帰しています。

 

当法人が、適応指導を行うに当たり、特に重点を置いているのは、様々な場での余呉の自然などを盛り込んだ多くの体験活動の実施と、何もかも手作りの温かい寄宿生活と、人との出会いを喜び、大切にし丁寧にかかわっていくということです。

 

余呉の上丹生地域も過疎と高齢化の波が襲い、周りを見渡せば、若い人の顔は、ほとんど見られない状況です。この地域では、唯一若者が集まる場所となっています。そこで、地域のかかわりをより深めるためにも法人として何かできることはないか・・と試行錯誤の結果、昨年度より上丹生地域の高齢者サロンの有志の方々に、当法人の体験活動のひとつである、陶芸・紙粘土・トンボ玉などを生徒と共に体験していただきました。

 

また生活改善などで、祭りも寄り合いも簡素化していく中で、地域で、集まる機会も減ってきたので、当法人内に、バーベキューサイトや囲炉裏をインターンシップの大学生たちと共に手作りし、私達の企画で、気軽に集まれる場所を作ってきました。そこでは、春は花見・夏は川狩り・秋はバーベキューをしながらのジャズ鑑賞会・冬は囲炉裏を囲んでのクリスマス会や、忘年会などを続けてきました。

 

限られた一部の方々ですが、当法人とのかかわりを持って、集えることで、今まで、こんなに長く生きてきたのに、自分で真剣にもの作りをしたことがなかったが、できてすごくうれしい・・みんなに会える場ができて楽しい・・と、喜んでいただいています。また、自分達の作品をいつくしみ、玄関や床の間に飾ったり、余呉の文化祭に出展したりすることもできました。みなさん、物作りを通して、生きがいをみつけられたようです。

 

私達も、こうやって自分達にできることで地域の方々とつながることで、この地域に伝わるものを教えていただいたり、農作物をいただいたり、除雪を手伝っていただいたりと、本当に助かっています。知らず知らずのうちに、お互いのできることを物々交換しているようです。

 

そこで、このような暖かい交流を一部の地域や年齢層だけではなく、もっと広げていきたい。この木造校舎の癒しの空間で、様々な体験活動が、年齢を問わず、経験できる場として充実させていきたい、ここに集うことで、知恵と知恵を交換し、若い力とお年寄りの積み重ねた経験が自然と交換し合える場をつくっていきたいと思い、体験型のコミュニティアートカフェを開設したいと、思うに到りました。

 

田舎に若者がいないわけではありません。いても集える環境も、場所もないのです。若者も子どもも家族も高齢者もまた、バリバリの働き盛りの人たちも、地元でみんながちょっと寄っていける場所作りをしたいのです。そして、田舎にだって楽しいところや刺激を受けられるところはある。それがこれからの田舎を支えていくのではないかと思います。

 

誰かにお世話をしてもらってありきたりのサービスを受けるのではなく、自分で選んでいける、ちょっとおしゃれをしてお友達と集まったり、また、家族団らんをしてみたり、親子で何かに挑戦してみたり、一人で、ゆっくり過ごしたり、そういうことがいろいろ選択できる主体的な場、そして、余呉以外の人もふらっと立ち寄れる場、そういう、今までにない新しい公共の場づくりをしたいと考えています。

 

ゆったりとした昔懐かしい学校の木造校舎で、癒されて、ひとりできてもさびしい思いをすることもなく、一時、身を休めるこんな場所がこんな田舎にあっても良いのではないでしょうか・・・

 

あそこにいけば癒される・・・・

 

あそこにいけばいろんなことに挑戦できる・・・・

 

あそこに行けば人のぬくもりが感じられる・・・・

 

そんな場としていけたらと考えます。

 

私達の言うコミュニティアートカフェは、体験活動や食事などを提供していきますが、目的とするのは人と人とのつながりであり、人と社会がつながる場であると考えています。

 

この事業を立ち上げる段階で、新たにつながって行くネットワークや地域に埋もれている人材の掘り起こしなど大切だと思っています。

 

田舎の中で、同じような思いを持って各自がいろいろ挑戦している私達のような点の存在が繋がり、線となり、面となって、新しい田舎の街づくりや活性化の一助になっていければと考えます。

 

ただ私達のできることには限界もあります。そのためには、地域の人々の力も知恵も巻き込んで、まずは月に1回でも2回でもいい、急がずあわてず丁寧に開設していきたいと思います。

 

平成24210

                         特定非営利活動法人

                         子ども自立の郷ウォームアップスクールここから

                     理事長  唐子 恵子